


自分がプロに行くなど、全く考えていなかった。
きっかけは、甲子園予選の準決勝。自分の対戦相手を見るために、スカウトが試合を見に来ていた。その試合で宇佐美は5打数4安打1ホーマー。捕手として盗塁も次々と刺した。その様子にスカウトが目を留めた。
「その日はたまたま調子が良かった」と宇佐美は笑って言う。「身体が小さかったから、目についたんじゃないですか?」。小さいのが、逆に目立つきっかけになったのでは、と言うのだ。宇佐美は、いつも前向きに物事を捉える。
指名の可能性があると言われてはいたが、本当に指名されるとも思っていなかった。
そしてドラフト会議当日。宇佐美はヤクルトスワローズに6位で指名された。既に社会人野球部から声がかかっていた。三日間悩んだ。
だが「よりレベルの高い舞台で野球をしたい」と、プロ入りを決意する。

「念願叶って」という訳ではなく入ったプロ。練習が辛いとは思わなかった。「意外に楽だな」。そんなことを思った。高校からプロ野球に入った選手は大概初年度にホームシックにかかると言うが、宇佐美は全くホームシックにはかからなかった。
ただ、プロのレベルには驚いた。捕手をやっていて、ボールを捕るのが恐いと初めて思った。コーチが投手を見ながら言う。「あの投手は大したことないな」。宇佐美は驚いた。大したことあるじゃないか、と。今までそんな球を受けた事はなかった。
それでも、決して練習は辛くはなかった。
入った当初、3年在籍できればいいかと思っていたプロ生活。予想よりも長く、7年間ユニフォームを着続けることになる。それは順応性の高さのお陰かもしれない。
野球生活において、何度かの転機があった。プロ3年目には、小学生の頃からずっとやっていた捕手から、内野手へコンバートされた。小学生の時、誰もが敬遠する捕手を、「皆が嫌がるのなら俺がやってやる」と負けん気いっぱいの気持ちで引き受けた。それから捕手を嫌だと思ったことは一度もない。
だがプロに入ってのコンバート。そのコンバートにも、「コンバートしたらチャンスが生まれる」と前向きな気持ちだった。内野守備を始めて、日々上達するのが楽しかった。
プロ生活で一番嬉しかったのは、初めて一軍でスタメンになった日のこと。その日の喜びは今でも忘れていない。
だが、その試合で3三振。気負っていた訳ではないと思う。ただ一軍レベルの球が打てなかった。

初めて一軍登録された次の年、一度も一軍に呼ばれなかった。足は限界に近く、毎日朝起きてシャワーを浴びて暖めなければ、歩くこともできなかった。
二軍の最終戦では、その年初めてのスタメンだった。事前に処遇について告げられることはなかったが、何となく気付いていた。
「来年は戦力として考えていない」と通告された。その日の夕方には止めようと決意していた。未練は無かった。
一軍に呼ばれチャンスを掴む選手と、掴まない選手。その差は何か。
宇佐美は、自分には貪欲さが足りなかったと振り返る。何が何でも一軍でという気持ちが足りなかったと。
「二軍慣れ」というものがどんなものかも、わかってしまっていた。

そこから第二の人生に放り出されてしまったが、別に慌てはしなかった。前向きに。ここでも宇佐美の美点は生かされる。
契約金は親に渡していた。大して貯金があったわけでもない。
まずは車を売った。ある時はある時なりに、ない時はない時なりに。金銭感覚はしっかりしていたと思う。
現役時代から縁のあった人が、「うちで働かないか」と呼んでくれた。10月に解雇通告を受け、翌年1月にはもう次の仕事に就いていた。
広告代理店の営業マン。それがユニフォームを脱いだ後、身にまとった肩書きだった。
社会人になって最初、週休2日の生活に「休み過ぎだ」と思ったという。エクセルやワードといったパソコンスキル全般、社会人としてのマナー。全てを学ばせてもらった。
だが会社の事情があり、その仕事は1年で辞めることになる。
何もせずにいる際に、行きつけのバーの経営者に誘われ、バーテンをしたりもした。
バーテン時代に来店していた客に、後に妻となる女性がいる。妻の実家に行った時、妻の両親に言われた。「何か定職についてくれ」。
その時も、助けてくれたのは周りの人間だった。ゴルフ仲間の会社専務に、「うちの会社に来ないか」と誘われた。ハウスメーカーの営業職だった。
最初は飛び込みの営業もやったが、今では一課長として部下をまとめあげ、指導する立場になっている。ノルマの数字をクリアした時得られる達成感は快感だ。

最近の人は、自分の殻に閉じこもる人が多い。もっと自分から出ていけばいいのにと思うと言う。
また、根拠のない自信を捨て、謙虚な気持ちで物事に望むことが大切だとも言う。
今の宇佐美を支えているのは、間違いなく人と人との出会いと、「一度口に入れてみなければわからない」という新しいものへ対する前向きな気持ちだ。
18歳の時、やってみなければわからないと、プロ野球の世界に飛び込んでみた。
コンバートをチャンスと捉え、前向きに取り組んだら一軍スタメンのチャンスを得た。
プロを解雇されても、すぐに誘ってくれる人がいた。
転身を成功へと繋げた宇佐美の言葉は、確かな説得力を感じさせるものだった。

首都圏を中心にアパート経営に特化した賃貸住宅経営の提案を行う、土地活用のプロフェッショナル集団。
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