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ユニフォームを脱いだ選手たち~セカンドキャリア奮闘記~

元千葉ロッテマリーンズ 和田孝志

最後の決断

「野球に未練はあるか?」―ある日、和田は当時の山本監督からこう切り出された。
その時自然とでた和田の言葉は「監督に任せます」というものだった。決して派手ではないが、地道に努力してきた和田の才能を認め、二軍生活が続き絶望の淵にいた時も「一緒に野球をやろう」と声をかけてくれた監督に、最後は任せよう、そんな思いだった。
それから1ヶ月後、ダイエー秋山幸二氏の引退セレモニーが行われた福岡ドーム。普段通り早い回でマウンドに上がる準備をしていた和田だったが、出番がなかなか回ってこないまま最終回、9回のマウンドに上がった。最後のバッター城島をピッチャーゴロに打ち取った瞬間、これが自分のラスト登板かーそう感じた。シーズンが終わり、自由契約が告げられた。あの時「まだやりたい」そう訴えていたらどうなっていただろうか。
現役続行への思いは強かったが、肩が限界にきていた。このままでは野球はできない。
10年という節目のシーズンを終えた和田は引退を決断した。

現役時代

元千葉ロッテマリーンズ 和田孝志

大卒で入団し、しばらく二軍生活が続いた。4年目でようやく巡ってきた初登板では一軍のレベルの高さに驚き、当時の投手陣、伊良部、小宮山、河本、成本といった顔ぶれを前に「そこを打ち破るまでの技術も、自信もなかった」という。ただ投げるだけの日々が続いた。「俺、クビになるのか…」とふと思った時、このままでは終われない!「信じる者は自分だけだ!自分しか頼りになるものはない!自分を守るのは自分だ!」とついに動き出した。年齢的にも若くはない。必死になって、大汗かいて、黙々とウエイトに励む自分の姿を他人に悟られたくなかった。近所のスポーツクラブに入会し、「いかにしたら球が速くなるか」それだけを考えて体を鍛えあげた。その変貌は誰が見ても明らかだった。
球速は確実に上がり、自分でも恐ろしいぐらい球が生きだした。
プロ生活10年を振り返っても、和田が満足できる数字を残したシーズンはこの後の終盤の2年間だけだ。最後の一年は、高校時代に患った右肩の古傷が痛み、思うようにはいかなかった。

新たなスタート

元千葉ロッテマリーンズ 和田孝志

肩の手術をして、復帰したい思いも強かったが、和田の人柄に球団はチームスタッフという新しいポジションを用意した。和田自身も大好きなロッテに残れるのであればと快諾し、引退後の3年間を裏方としてチームを支えた。スコアラー、査定、バッティングピッチャーなどの実務をこなす中で、自分の感情を押し殺さなければならないストレスを感じていた和田は、2005年、ロッテが優勝を決めたその年、自らチームを去った。ついに野球と完全に離れた生活が始まる。
食べること、食を囲む店の活気や賑わいが好きだった和田は、なんとなく飲食への道を考えた。求人雑誌を片手に電話をするが、年齢を理由に断られた。社会は想像以上に厳しかった。野球しかやってきていない人間に何ができるのか?

第二の夢

元千葉ロッテマリーンズ 和田孝志

なんとか知人の紹介で入った飲食店は修行の場だった。トイレ掃除や、野菜を切る。くたくたの毎日だったが、それでもやはり活気溢れる店の雰囲気が好きだった。どうやったらこういう店ができるのだろうか、そう考えた和田は、現役を引退した後、飲食で成功をおさめている石井浩郎氏に相談に行くが、結局そのまま石井氏のお店でアルバイトをすることになった。しばらくすると新店舗の店長を任され、売上の管理から商品の流れ、アルバイトの管理、接客を経験した。少しずつ先が見えてきた。「自分の店をやろう!」。
勝算も何もなかったけど、とにかくやるしかなかった。店を出す場所がなかなか見付からないー働いてくれる人が見つからない。頭を下げて、ゼロからのスタートだった。いざ動き出しても、経営者として、何より人を使うという大変さが身にしみた。「野球選手の頃よりめちゃめちゃ苦労しているよ。」と明るく笑う。店は軌道に乗り、和田の表情も生き生きと感じる。立派な成功者だ。

成功の秘訣

プロのアスリート人生には必ず終わりがくる。終わったその後のことを考えるのは恐いーだからこそ、そうならない様に、今を続ける努力をする必要がある。和田から引退後の焦りや戸惑いを感じることはなかった。何故か?和田の人間性はもちろんのこと、漠然とでも冷静に引退後の生活をイメージする自分がいたからではないか。そして自分自身へ投資するある程度の余裕を持つことで、その後にできる可能性が広がったのだと。
何がしたいかと聞かれれば、野球がしたいというのが本音だろう。野球への思いは断ち切ることはできない。野球との繋がりをこれからも求め続ける為にも、今はこうして社会に出て、経験を積み、周囲にみとめてもらい、自分自身のスキルアップの為にも、挑戦する気持ちを忘れないでいたいという。野球と離れた今、野球の楽しさ、魅力を益々感じるようになった。

野球愛

元千葉ロッテマリーンズ 和田孝志

今でも、和田の店には野球ファンが多く集い、野球談議に華が咲く。「ロッテが好き」「会えてよかった」と言ってくれるお客さんがいる。野球を通して、世代や環境を超えて繋がっていく、人との繋がり。今年4月にロッテが開校したマリーンズアカデミーの講師を引き受けた。自ら去ったチームが、もう一度声をかけてくれたことが嬉しかった。そこで出会う子供達の野球が好き、うまくなりたい、という一生懸命な姿を目にするたびに思う。「野球って本当に本当にいいもんだな」と。
アスリートに限らず、これからの人生=セカンドキャリアを益々充実させる為に、決して「自己鍛錬をおこたらず、悔いの残らぬように」という和田のメッセージは、万人に届くはずだ。

職場のご紹介

和ダイニング美醤(びしょう)

和ダイニング美醤(びしょう)

渋谷宮益坂上交差点すぐ。
元千葉ロッテマリーンズ投手の和田孝志が手がける「本格和ダイニング」。
日本各地の銘酒が取り揃えられ、メニューは、熊本直送馬刺し、徳之島郷土料理の豚煮込み「わんふにぃ」、かりかり牛蒡、レタスしゃぶしゃぶなど、こだわりと工夫を加えた品々ばかり。
旬の素材をお楽しみください。

【住所】 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-10-15 B1[地図
【電話番号】 03-5485-0026
【営業時間】 月~金 18:00~02:00 土・祝 17:00~23:00 定休日 日曜日
【URL】 http://bishou.shichihuku.com/
【BLOG】 http://ameblo.jp/bishou/
黒木宏子今号のインタビュアー:黒木宏子(くろき ひろこ)
株式会社JCN千葉制作 千葉ロッテマリーンズ応援番組「ロッテレビ」リポーター。
趣味はヨガ、岩盤浴、ショッピング、映画鑑賞、野球観戦、旅行、お酒。